引き受けてくれた先の会社も前から多少は知っていた同じ池袋の不動産会社で、
従業員はみな良い人達で、良く言えばアットホームな環境でした。
僕は、管理部に配属され、今までお世話になったオーナーさんや入居者さんに
新しい名刺を配り、拾ってくれた恩義に報いようと頑張っていたので、
すぐに新しい会社の人達からも認められるようになりました。
ところが、入社して2ヶ月位経つと段々色んな事が見えてきまして…。
元々うちの会社で募集していた空室物件の鍵も
当然そっちの会社に持って行った訳ですが、
誰も物件を見に行ってはくれません。
ん?普通見に行きませんか?
自分の会社が募集している物件ですよ?自社オーナーさんですよ?
しかも就業時間中に社長の隣で寝ていらっしゃる方もいらっしゃいますな…?
パソコンの画面もゲーム画面ですけど^^;
アットホームな環境が過ぎて、完全なぬるま湯と化しておりました。
別に、僕もぬるま湯が嫌いな訳ではございません。いや、むしろ好きです。
でも、今まで頑張ってきてようやくオーナーさん達からも認められる様になってきたのに
「会社変わってから決まらなくなったね」
と言われてしまっては、一大事です。
しかも同じ池袋で、データを持ち出した後輩が同じ物件をガンガンやってる訳です。
こりゃマズイ。
人としてハートが無い野郎がやっている会社でも、
よく決めてくれる不動産会社は「良い不動産会社」な訳ですよ。
逆にいくら人間的に良い人が居る不動産会社でも決めてくれない会社は
「ダメな不動産会社」になってしまう訳です。
本来ならば、そこの会社で改革を行い、より良くしていけばベストなのでしょうが、
せっかく気持ち良くぬるま湯に浸かっているのに、
いったい誰が売られちゃった会社の人間のやる改革などに乗っかるでしょうか。
考えただけでもゲロ吐きそうになります。
実際、辞める時に社長に話したら
「じゃあ、あなたが営業部の責任者になって変えていけばいいじゃない。」
と言われましたけど。
いやいや、無理でしょ、それ。
当然「嫌です。」と断りましたけど。
ただ正直僕もちょっとズルい処も有りまして…。
このまま長くこの会社に居て、僕が完全にそこの会社の人間と
認知されてしまう前に、会社を辞めて、オーナーさん達を取り戻さなければ。
みたいな所は有りました。
しかし、いかんせん金が無え!
そう、まったくといっていい程にございません。
このままではノーマネーでフィニッシュです。
でも僕にはツキが味方してくれたようです。
たまたま訪問したマンションオーナーさんが、ステテコ姿で
「おう、どうだ?ん?なんだお前自分でやらねえのか?金が無い?いくらだ?俺が貸してやるよ、お前がやるってんならよ。」
といってお金を貸してくれる事になりました。
そこから、一気に独立が現実味を帯びてきて、その話から一週間後に社長に
「辞めます。」と伝えたのでした。
(後日談ですが、僕はそのオーナーさんに1年で借りたお金を返すと約束したのですが、なんとそのオーナーさんはそれから7ヶ月後にこの世を去り、僕は約束の1年後に仏壇に手を合わせて、泣きながらお金を返しました。直接この手で返して褒めてもらう夢は叶いませんでしたが、今でも僕の大恩人です。)
旗揚げより2年と少し、意地を支えに頑張って来ました。
大恩あるオーナー、
一緒に頑張っているスタッフや、オーナーさん、入居者さんはもちろんの事、
僕をこの業界に誘ってくれた上司、事業部を売却した社長、
拾ってくれた不動産会社の社長とスタッフ、
データを持って他社に売り込んだ後輩、
そのどれが欠けてもきっと今の僕と僕の会社は存在しなかったと思います。
だから、関わった全ての人達に感謝して、先人達の引いてくれたレールの上を
「俺ってツイてるよなあ…。」と思いながら歩んでおります。
これからもハートフルに頑張って行きますので、
道端で見かけても罵詈雑言とか浴びせないで下さい。宜しくお願い致します。